孔雀明王とは|ご利益・ご真言・梵字─縁起物,木彫り,置物

怒らない明王─孔雀明王

ほぼ全ての明王は、炎を背負い、武器を手に、
形相は憤怒です。不動明王はその代表格です。
ところが孔雀明王は明王でありながら怒っていません。唯一、穏やかな表情の明王です。
羽を広げる孔雀の背に乗り、蓮華に座した姿で描かれています。

さかのぼると、インドの女神マハーマーユーリー(偉大な孔雀)につき当たります。
災いから人を守る五守護女神の一柱でした。
明王の中では珍しい、女神に由来する尊格です。
「仏母大孔雀明王(ぶつもだいくじゃくみょうおう)」と呼ばれることもあります。

孔雀は体内で毒を益に転じる

孔雀は美しい見た目の反面、「毒蛇」「サソリ」「毒虫」を食べます。
若い「コブラ」すらも食べることがあるそうです。
毒をエネルギーに変える姿に神秘を見い出したのは遠い昔の人々ですが
これは現代を生きる私たちにも通じる感覚です。
やがて、人間の煩悩の「三毒|貪(むさぼり)、瞋(いかり)、痴(おろかさ)」をも食い尽くすという解釈が生まれました。
毒を益に転じるという観点は、孔雀明王に独特の世界観です。

姿|一面四臂、孔雀の背の蓮華座に

孔雀明王は、一面四臂、孔雀の背の蓮華座に座す姿で表されます。
四本の手には、それぞれ蓮華(れんげ)、倶縁果(ぐえんか)、吉祥果(きちじょうか=ザクロ)、孔雀の尾を持っています。

持物働き意味
蓮華敬愛人を惹きつけ和合させる
倶縁果増益福徳・生命力を増す
吉祥果調伏魔・災いを退ける
孔雀の尾息災毒・病を払う

雨を呼ぶ鳥 ─ 祈雨と鎮護国家

古来から孔雀は、雨が近づくと鳴き、雨を察知する鳥とされてきました。
孔雀明王が祈雨法(雨乞い)の本尊である所以です。
稲作を中心とした古代の日本にとって、天候は収穫を左右し命に直結する切実な関心事でした。
奈良時代以降、孔雀明王を本尊とする修法「孔雀経法(くじゃくきょうほう)」は、
雨乞い・災いの除去・鎮護国家の最重要級の祈りとされたようです。
毒や災いを取り除き、天気も司る。暮らしの根本に関わる尊格として、篤く信仰されてきました。

ご真言(マントラ)

心身の毒を浄化し、災いを転じる力を自分の内にもたらすとされる真言です。

オン・マユラ・キランディ・ソワカ

オン「聖なる響き」マユラ「孔雀」キランディ「光り輝く・徳」ソワカ「成就あれ」
ここから「孔雀明王の功德が光り輝き、ご加護がありますように」という祈りが込められています。

梵字 ─ 孔雀明王をあらわす文字

孔雀明王の梵字は「マ」。人を縛る三毒(貪・瞋・痴)や我執そのものを、
害ではなく滋養へと反転させる祈りを宿しています。

孔雀明王は、明王でありながら忿怒の相をとらず、柔和な菩薩のすがたで表されます。
毒を喰らってなお傷つかず、慈悲へと変えるその性質を、姿そのものが語っています。

ご利益

孔雀明王
あらゆる毒と災いを喰らい、害を福へと転じる、慈悲の姿の明王。
怒りや迷いを鎮め、心と暮らしを清め、災難のただ中にあっても安らぎをもたらします。

厄除け・魔除け・災難除け・毒難消除
無病息災・病気平癒・健康長寿・身体堅固
子宝安産・家内安全・延命息災・五穀豊穣
煩悩退散・心身清浄・心願成就・開運招福・雨乞い

孔雀明王と銘木の共通点|災い転じて福となす

孔雀は、毒を喰らい、それを糧に美しい羽をまといます。
銘木もまた、傷を回復するプロセスで生じた痕跡が模様として目を惹く素材です。
瘤(こぶ)は、その代表格です。
また神代木は、泥を身に帯び、その間に色を深く変えた珍木です。
「泥」や「傷」が美しい姿形の背景にある点は、毒を糧とする孔雀と共通しています。

孔雀明王─毒をも糧に

孔雀明王には「毒は、避けるものではなく、変えられるもの」という思想が流れています。
孔雀は毒蛇を食べても死なない。どころか、 生きる糧として、結果的に美しい羽根を仕立てています。
古人はそこに祈りの形を捉え、救いを見出したのかもしれません。

多くの明王が怒りと炎で煩悩を焼き払うのに対し、
孔雀明王は穏やかな顔のまま、毒を呑み込み、美しさに変えるというアプローチです。
生きていれば毒を口にしない人生はありません。
「悔しさ」「不安」「憤り」 それらを抱えたまま、なお羽根を広げられるか。
その問いに、力ずくではない救済を通して、
孔雀明王は、無言で「できる」と答えているのかもしれません。

孔雀明王について、よくある質問

孔雀明王(くじゃくみょうおう)とはどんな仏様ですか?
密教特有の尊格である「明王」の一尊で、孔雀の背に乗った姿で表されます。もとはインドの女神マハーマーユーリー(偉大な孔雀の意)で、災いから人を守る五守護女神の一柱でした。毒蛇や毒虫を食べる孔雀の力を神格化した仏で、病・災難・煩悩といった”毒”を取り除く守護尊として信仰されてきました。
孔雀明王はなぜ怒っていない(菩薩のような姿な)のですか?
明王は不動明王に代表されるように、ふつう忿怒(ふんぬ)の相で表されます。しかし孔雀明王は、女神マハーマーユーリーに由来するため、ただ一尊、慈悲深い菩薩形で表されます。美しい孔雀に乗り、おだやかな表情をしているのが大きな特徴です。
なぜ孔雀に乗っているのですか?
孔雀は、美しい鳥でありながら毒蛇やサソリ、毒虫を食べても害を受けない強い鳥です。その姿から、人間の煩悩の根である三毒(貪り・瞋り・愚かさ)を喰らい、仏道へ昇華させる力をもつ仏とされる解釈が広がりました。毒を恐れず、益に転じる――その象徴が孔雀です。
孔雀明王の真言(ご真言)は何ですか?
「オン・マユラ・キランディ・ソワカ」です。「マユラ」はサンスクリット語で孔雀、「キランディ」は光り輝く・徳を意味するとされ、あわせて「孔雀明王の徳が光り輝き、ご加護がありますように」と意訳されます。不空訳『仏母大孔雀明王経』には、これを展開した長大な大陀羅尼が説かれています。
孔雀明王のご利益は何ですか?
病・災難・煩悩という”毒”を取り除く守護尊とされます。代表的なご利益は、病気平癒・病魔退散、息災・延命、災難除去・厄除け、無病息災、煩悩の浄化など。古くは雨乞い(祈雨法)や国の安寧を祈る大法の本尊ともされ、暮らしの根本に関わる仏として信仰されてきました。
孔雀明王と不動明王など他の明王との違いは何ですか?
最大の違いは姿です。不動明王をはじめ多くの明王が、炎や武器を伴う忿怒の相で仏敵を打ち砕くのに対し、孔雀明王は唯一、慈悲深い菩薩形で孔雀に乗ります。力で打ち破るのではなく、毒(災い・煩悩)を喰らって浄め、益へ転じる――その働き方そのものが、他の明王と異なります。

この記事の執筆者まなこの音について

まなこの音では、見た目に特徴のある木材「銘木」を使った小物製品や、木彫りの仏像・縁起物を取り扱っております。
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毒を糧に、美しい羽を得る孔雀明王。
傷や時間がそのまま美しい模様を見せる銘木は、どこか近いものが感じられます。

珍しい木を使用した実用品

まなこの音では、傷や時間をその身に宿す素材性を大切に、
銘木と呼ばれる希少材を使用したプロダクト製品の開発に取り組んでいます。
現在進行中のプロダクト一覧です(試作開発済み、販売中のものはクリックできます)

毒さえ力に転じてきた孔雀明王と同じように
傷や時間を身に宿す銘木という素材を使い、
暮らしに寄り添うものづくりに取り組んでいます。

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