蔵王権現とは?意味・由緒・ご利益|山岳信仰から生まれた日本独自の守護尊

蔵王権現 木彫り

蔵王権現とは|7世紀頃に生まれた日本の神

蔵王権現とは、修験道の本尊として信仰されてきた、日本独自の尊格です。
正式には「金剛蔵王権現」、または「金剛蔵王大権現」とも呼ばれます。
奈良県吉野の金峯山寺では、修験道の開祖・役行者(えんのぎょうじゃ,役小角)が
金峯山で祈りを重ねた末に感得した御本尊として伝えられています。

「蔵王」は、「ざおう」と読みますが、もとは「ぞうおう」という音でした。
「蔵」は仏語です。 「三蔵」は、経・律・論という仏教聖典のエッセンスを意味します。
つまり「蔵」は智慧を象徴し、その「蔵」の王として現れるというニュアンスが読み取れます。

「権現」とは、神仏が人々を救うために、仮の姿をとって現れたものを意味します。
すでに土着の神々を信仰していた日本に仏教が伝来したタイミングと重なる7世紀頃。
「釈迦」「千手」「弥勒」の三尊を、定着させる契機の一つとなりました。

蔵王権現のはじまりと伝承

役小角(えんのおづぬ)が山岳修行中に祈祷する中で、
暗闇からはじめに現れたのが「釈迦如来」「千手観音」「弥勒菩薩」の柔和な三尊でした。
しかし、その穏やかな姿のままでは荒ぶる衆生を救いがたいと考え、さらに祈念を続けます。
すると、祈りが呼応したかのような地の鳴動(地響き)、天の雷鳴(落雷)とあわせて、
忿怒の形相で立ちあらわれたとされています。これが蔵王権現のはじまりです。

蔵王権現は、釈迦如来・千手観音・弥勒菩薩の三尊が合体した姿 と伝えられています。
釈迦は過去を、千手観音は現在を、弥勒は未来をあらわしており、
未来永劫人々を救うという解釈が語り継がれています。

本地垂迹説(ほんじすいじゃくせつ)

「権現」とは、神仏が人々を救うために、仮の姿をとって現れた存在を意味します。
その本地は「お釈迦様」「千手様」「弥勒様」の三尊です。
蔵王権現はこれらが別の姿を通して現れた尊格といえます。

こうした見方は、外来の宗教であった仏教が、
日本古来の八百万の神々や山岳信仰と結びつく中で深まっていった捉え方です。
本来の姿である仏や菩薩を「本地」とし、
人々を救うために仮に現れた姿を「垂迹」と見る考え方を、 本地垂迹説と呼びます。

修験道の開祖であり呪術師でもあった役小角の感得伝承として語られることで
「遠い異国から来た神々も、私たちに身近な神と同じなんだ」という安心感が
未知の宗教に説得力を加え、対立や葛藤を経て、徐々に馴染んでいったと考えられます。

蔵王権現の正面画像蔵王権現の背面画像

三開仏・役行者三尊|前鬼 , 役小角 , 後鬼。

蔵王権現の姿があらわす意味

蔵王権現は「三眼」「怒髪」「火炎光背」を持つ力強い姿です。
右手には魔を砕く三鈷杵。左手は煩悩を断つ刀印。
左足は大地を踏みしめ、右足は高く掲げる姿で描かれます。

背にまとう智慧の炎には、迷いや災いを焼き尽くすお清めの意味があります。
また、蔵王権現の身体は青黒く表されることがあります。
この色は、深い慈悲や広い包容を示しています。
激しい姿の奥にあるのは、怒りに裏打ちされる大きな慈悲だとされています。

ご利益

蔵王権現
災いを退け、迷いを断ち切り、進む力を与えてくれる守護尊。
ただ願いを叶えるだけではなく、苦しみや迷いの中にある人を奮い立たせ、
自らを立て直す力を授ける尊格として信仰されてきました。

厄除け・除災招福・所願成就・心願成就
家内安全・開運・魔除け・災難除け
困難突破・迷いを断つ・精神安定・修行成就

まとめ

蔵王権現とは、日本の古神道・修験道と外来の仏教が重なり合う中で生まれた日本独自の守護尊です。
修験道の開祖である役行者が、吉野・金峯山での祈りの中で感得した尊格として伝えられています。
・本当にやさしいとはどういう意味か。
・救うとはどういことか。
・見えないものを含めて見ようとするあり方。
私たちの世界には、表面をなぞるだけでは見えてこない本質や
反射的に感じたこととは異なった真相。
そうした矛盾や逆説がありふれています。

ただ穏やかであることだけでは触れられないもの。
ただ願いを聞くことだけでは届かない何か。
蔵王権現にはその捉え難い空白が宿っているようです。
怒りの裏にある深い祈り。その逆説は、蔵王権現という尊格の本質なのかもしれません。

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