栃―染み込む。にじむ。やわらかな性質

栃―染み込む。にじむ。やわらかな性質

大地が育んだ暮らしの恵み

栃(とち)は、山里の暮らしを支えてきた木。
東北地方から近畿地方までの山地に自生しています。
その実にはデンプンやタンパク質が豊富に含まれ、縄文時代から人々に食されてきました。
2000年代に入ることから、徐々に需要が高まり、過度な伐採によって良材が減少しました。
現在ではウォールナットにも並ぶ高級材として位置づけられています。

材質の特徴ー儚さと華やかさを内包する良材

栃材の特徴は透明感のある白みです。
栃は木材利用の観点から珍しい樹種です。
通常、木材は樹木の芯材と呼ばれる中心部を使用します。
内側の方が硬質で堅牢なためです。
しかし、栃は芯材と白太(外側)の性質に違いがありません。
そのため、美しい見栄えの白太を中心に使用するようになりました。

色味や質感を変化させやすい

栃という木には内部の密度が釣一で、通常の樹木にある芯材と白太の区別がほどんどありません。
その成り立ちから、相対的に、耐久性や耐水性に弱さがあります。
しかしその弱さが、「スポルテッド杢」を作り出しています。
また、水分の染みやすさ”は、顔料や染料の定着を促します。
作り手の意図に応えやすい材といえます。

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栃の小噺(こばなし)

加工の現場で、職人たちはこう口にします。
「中を割ってみるまで、わからない。」

栃の木は、ときに地中の砂粒や小石、鉱物の粒を巻き込みながら育ちます。
幹の奥に土中の成分を吸い上げた金筋(かなすじ)と呼ばれる白い筋が現れることがもあります。
目には見えずとも、内部に小さな異物が潜んでいることがあるのです。
刃物が当たれば、欠けてしまうこともあります。
それでも評価され、選ばれている背景には見た目の美しさがあります。

まとめ

栃は、一見すると単調な白い色の地味な模様の木です。
年輪も見えず、力強い木目は存在しません。
それが、逆に現代の感覚に馴染んでいるのかもしれません。
木質全体の密度が均一という特異な樹木は、脆さをもちますが、
作り手の発想や狙いに馴染みやすい柔らかな性質と捉えられます。

栃材,一枚板

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