瘤材(バール材)とは?特徴・使い方・世界での評価までわかりやすく解説【入門版】

瘤材(バール材)とは?特徴・使い方・世界での評価までわかりやすく解説【入門版】

1. 瘤材(こぶざい)とは|木のこぶが生む美しい装飾材

瘤材(こぶざい)とは、樹木の幹や根に生じた「こぶ状の異常成長部」から採れる木材です。
この瘤は、傷や病気、外的ストレスなどによって樹木の組織が異常に増殖した結果形成されるものです。
内部には複雑に絡み合った繊維構造と独特の木目模様(瘤杢)が現れます。
これら瘤材は、古くは正倉院御物の素材として、また海外ではバール(burl)と呼ばれ国や地域を超えて、
貴重材として評価されてきました。
本記事ではその【入門版】として、簡潔に瘤材の特徴や各国での評価、活用例について触れています。

瘤材の特徴としては以下の点が挙げられます。
・木目が渦巻き状・斑点状・波紋状など、通常材には見られない複雑な模様を持つ。
・似た模様はあっても同一なものはない。また同じ樹種の瘤であっても個体差が大きい。
・粘りや密着度などは樹種によって異なるが、全体的に硬質で強度が高い傾向がある。
・自然発生のためが供給量が不安定。
・小型の材料が多い。インテリアや工芸品、装飾材などに使われる。

2. 瘤材の主な樹種とそれぞれの特色【代表4種】

瘤材は多くの樹種で発生しますが、特に以下のような木から採れるものが珍重されています。
※一例です。

・屋久杉|泡瘤材

屋久杉瘤(泡瘤)yakusugi burl
屋久杉瘤(泡瘤)yakusugi burl

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3. 日本における瘤材の歴史と用途の変遷(奈良〜昭和)

日本では、奈良時代の正倉院宝物の中に欅の玉杢が使用された厨子が残っており、
瘤材は早くから特異な意匠材として認識されていました。
(※厳密には玉杢を瘤杢と分類しない見方もあります)
江戸時代には、茶人や工芸作家によって黒柿・花梨瘤などの瘤材が好まれ、
茶道具・香合・飾り台などに使われました。
明治以降、木材流通の近代化とともに海外からも瘤材が輸入され、
特に20世紀後半には大径の瘤板がテーブル天板などに利用されました。
現在では供給量の減少により、瘤材は高級装飾材や一点もの工芸素材として流通しています。


・クラロウォールナット|瘤材

ウォールナット瘤(クラロウォルナット等)Walnut burl

・楠|瘤材

楠瘤(クス瘤)Camphor burl

本画像は一部ですが、このように樹種によって色味や質感が異なります。
一方で瘤材特有の雰囲気があり、樹種がわからなくても、瘤であることは判別できます。

4. 世界における瘤材の評価と活用例(中国・中東・欧米)

瘤材は日本だけでなく、多くの国で伝統的に用いられてきました。

中国

明・清代には、瘤材は文人文化の頂点にある書画家具や文房具に使われました。
たとえば、黄花梨の框組にバール材の天板を嵌め込んだ絵画机は、瘤杢の流麗な木目を活かすために波状に接ぎ合わされ、
上流文人が書や画に向き合う場を静かに彩っていました。
さらに清の乾隆帝が自ら御製詩を刻んだ根瘤の筆筒は、瘤の木目を「瑞兆」や「雲紋」に見立てるなど、
自然の中に意味や吉祥を読み取る東洋的美意識の象徴といえる使われ方をしています。

中東・イスラム圏

瘤材は宗教空間の象徴装飾として圧倒的な存在感を放ちました。
中でも、エルサレムのアル=アクサー・モスクに奉納された「サラディンのミンバル」は、
クルミ瘤材を含む木片6,500以上を釘も接着剤も使わずに組み上げ、真珠母や象牙とともに幾何学文様を象嵌した超絶技巧の説教壇です。
瘤材の自然な木目は、神聖さと数学的秩序の融合として祈りの場を荘厳に演出しており、
幾何と霊性が結びつくイスラム美術の極致とされています。

アメリカ

瘤材の利用は、先住民の伝統工芸から始まります。北米先住民の間では、
レッドウッドのバール材を用いて食物供物用のFeast Bowl(供物鉢)が作られており、
そこに彫刻や文様を施すことで自然の力を宿す器として尊ばれていました。
近代以降になると、カリフォルニアを中心にクラロウォールナットやブラックウォールナットといった瘤材が広く知られるようになり、
アメリカン・クラフトムーブメントの中で高級家具やアートピースに用いられました。
さらにこの流れは自動車産業にも広がり、
特にトヨタ・レクサスでは現在でも北米産ウォールナットの柾目材がインテリアに使用されています。
アメリカにおける瘤材は、開拓精神と職人文化が融合した象徴的素材として、
伝統と現代性の架け橋となって機能しています。

このように瘤材は世界各地で「自然が生み出した唯一無二の装飾性を持つ素材」として高く評価されてきました。


ヨーロッパ

17世紀以降、瘤材は王侯貴族の暮らしを彩る高級家具の化粧板として重用されました。
特にバールウォルナット(瘤クルミ材)は、ベネチアやロンドンなどの工房でヴィクトリア様式やロココ様式のキャビネット、
書斎机、チェストなどに用いられ、その複雑な杢目が富と教養の象徴として扱われました。
やがてその伝統は20世紀の高級車文化に引き継がれ、ロールスロイスやベントレー、マセラティといった高級車では、
ダッシュボードやコンソールパネルに瘤材が採用されるようになります。
中でもアンボイナバール(東南アジア産花梨瘤)やクラロウォールナットは、
特に装飾性の高い材として重宝され、車内に気品と格式を添える素材として珍重されました。
こうしたヨーロッパの瘤材文化は、クラフトマンシップとステータスの融合を体現するものとして、
今なお名門ブランドの象徴的要素のひとつとなっています。

・花梨 , アンボイナバール|瘤材

花梨瘤(アンボイナバール)Amboyna burl

5. 現代における瘤材の使い方と注意点【実用と流通の現在地】

現在、瘤材は以下のような用途で使われています。
・木工芸品(器、トレイ、文房具)
・高級家具やインテリア
・楽器部材(ギターの化粧板など)
・アクセサリー、ジュエリーボックスなどの小型装飾品
ただし、いくつかの樹種(例:花梨瘤、ローズウッド系)はワシントン条約(CITES)の対象となっており、
流通や持ち込みに規制がかかる場合があります。合法的な入手経路や産地の確認が必要です。
ワシントン条約以前に輸入された材の販売・購入は禁止されていません。
現在少量出回っている大型瘤材は、そうした過去の輸入材である可能性が高いです。

まとめ|瘤材とは自然が形づくる偶然の美

瘤材とは、木のこぶから採れる自然由来の希少な装飾材です。
不可思議な生成過程、奇異な瘤の見た目に反する中身の模様の美しさ。
これらの全体が、瘤材が地域と時代をこえてきた所以
ではないかと思います。

瘤材は、先に見たように日本を含む各国で高く評価されてきた木材です。
その利用は、実用と鑑賞の両面にわたります。
現在は流通量が限られており、製品化される数も多くありませんが、
独自性のある素材を求める人々の間で人気があります。

こちらは、かつて樹木として生きていた希少な木材群である銘木を、素材として製作した商品一覧です。
樹木としての個性は、似た形で材木にもあらわれます。
 ▶︎ 瘤材一覧|まなこの音
『銘木製|小物・実用品の制作・販売 』 _ 日常に、神秘を。 _▼
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まなこの音では、記事に掲載したような瘤(こぶ)を素材に
自然界の形をそのままにしてできるだけ手を加えずに
最小限、旋盤や刃物を使って制作・販売しております。
瘤製品一覧▼
https://shop.manakonooto.com/collections/burl
この機をご縁に、ぜひご参照ください。


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・「花梨瘤(かりんこぶ)」に関する記事はこちら▼
https://manakonooto.com/door-to-forest/karin/

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