瘤材(バール材)とは?特徴・使い方・世界での評価までわかりやすく解説【入門版】

瘤材(こぶざい)とは|木のこぶが生む美しい装飾材

瘤材(こぶざい)とは、樹木の幹や根に生じた「こぶ状の異常成長部」から採れる木材です。
災害や土壌環境などの外的な環境変化に伴う傷や病気、ストレスなどによって
樹木の組織が異常に増殖した結果形成される偶然の産物です。
木質は複雑に繊維が複雑に絡み、通称瘤杢(こぶもく)と呼ばれる木目模様が現れます。

瘤材の見た目の特徴
1. 木目が渦巻き状・斑点状・波紋状など、通常材には見られない複雑な模様を持つ。
2. 同じ樹種の瘤であっても個体差が大きい。
3. 硬度や粘り、香りなどの木質は樹種の特徴に応じる。



1986年出版の『銘木史』には、明治期の文献『木材ノ工芸的利用』からの引用が収められています。
引用文の中で「瘤(こぶ)」がすでに銘木の一種として言及されています。

普通ノ美観以外尚一種ノモノアリ所謂粋ナルモノ、凝ッタルモノ、渋キモノ〜挙グレバ左ノ如シ
「神代木・埋木・名栗丸太・肥松・古船材・大節材・樹梢・・水飴材・風蝕材・腐朽材・洗出及砂摺・
皮付きの儘磨きて床柱トナスモノ・皮ヲ剥ギ磨きて床柱、樽、棹縁等となすもの・斑竹(その他)・竹根」

瘤材の評価は、高度経済成長期の過度な伐採、乱伐による流通量の減少に伴う希少性に応じて
後付けされたものではなく、少なくとも明治期には、
特異な木質をもつ材として明確に認識され、銘木の範疇に位置づけられていたようです。
 ※明治45年発行の『木材ノ工芸的利用』は、国家的事業として編纂された体系的な木材資料です。 
 昭和61年発行の『銘木史』は現代版の『木材ノ工芸的利用』を作る目的で編纂されたようです。

瘤材は海外ではバール(burl)と呼ばれ、世界的に上質材という評価を得ています。
この記事ではその【入門版】として各国での評価、活用例をまとめました。

瘤材の主な樹種とそれぞれの特色|代表3種

瘤材は多くの樹種で発生します。
「屋久杉」「クラロウォールナット」「楠」は珍重される瘤の代表例です。

・屋久杉|泡瘤材

屋久杉瘤(泡瘤)yakusugi burl
屋久杉瘤(泡瘤)yakusugi burl

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3. 日本における瘤材の歴史と用途の変遷(奈良〜昭和)

日本において瘤材は、古くから構造材ではなく「意匠材」として用いられてきました。
奈良時代には、正倉院宝物の「赤漆文欟木御厨子」の欅玉杢(※玉杢を瘤杢と分類しない見方もあります)
以下に引用した「楩楠箱」の楠瘤材などに見られるように、
華やかな杢を持つ材が仏教工芸の装飾に用いられています。
日本では、瘤材は早くから特異な意匠材として認識されていたようです。

出典:奈良国立博物館「第68回 正倉院展」より
https://www.narahaku.go.jp/exhibition/special/201610_shoso/


江戸時代になると、床柱や床の間まわり、茶道具、指物などに使われました。
自然の歪みや偶然性を美として取り込む素材として位置づけられました。
すでに江戸時代には、板材を専門とする材木商「猫屋」が根っこ材、つまり瘤材を販売していた
可能性があります▼

江戸時代の材木商「猫屋」と根っこ材―瘤材のルーツ?

明治以降は先に書いたように、銘木の一種として明確に認識され、建築意匠や指物に広く使用されます。
さらに昭和期には海外から花梨瘤などが輸入され、高級家具やインテリアへと用途が広がっていきました。
このように瘤材は一貫して「見せるための素材」として、日本の美意識の中で扱われてきました。


・クラロウォールナット|瘤材

ウォールナット瘤(クラロウォルナット等)Walnut burl

・楠|瘤材

楠瘤(クス瘤)Camphor burl

このように樹種によって色味や質感が異なります。
一方で瘤材特有の雰囲気があり、樹種がわからなくても、瘤であることははっきりと分かります。

世界における瘤材の評価と活用例|中国、中東、米国、欧州

瘤材は、世界各地で古くから珍重されてきた木材です。
ただし、その評価のされ方は文化によって大きく異なります。
ここでは「中国」「中東」「アメリカ」「ヨーロッパ」における
瘤材の扱いと、その背景にある美意識の違いを整理します。

中国

明・清代には、瘤材は文人文化の中で特に重視されました。
黄花梨や紫檀などの高級材と組み合わせ、
瘤杢の複雑な木目を活かした天板や文房具が制作されています。
とくに根瘤をそのまま活かした筆筒や香合は、
自然の造形そのものを鑑賞する対象として扱われました。

清の乾隆帝の時代には、瘤材に詩を刻んだ器物も見られ、
その木目は「雲」や「気」の流れに見立てられていたそうです。
中国において瘤材とは、
自然の中に現れた兆しや意味を読み取るための素材でした。

中東(イスラム圏)

イスラム文化圏では、木材は高度な装飾工芸の基盤として用いられてきました。

代表例として知られる「サラディンのミンバル(説教壇)」は、
精密に加工された木片を組み合わせて構成され、
象牙や真珠母を用いた幾何学文様が施されています。

使用材にはクルミなどが含まれ、
その中には瘤状の複雑な木目を持つ材も確認されていますが、
重要なのは個々の材種よりも、全体としての構成美です。

均質な幾何学文様の中に現れる木目の揺らぎは、
人為と自然の境界を感じさせる要素として機能します。

瘤材はここで、
秩序の中に差し込まれる自然の不確定性として扱われました。

アメリカ

北米では、木材の「個性」そのものを価値とする文化が発展しました。

先住民の木工文化においては、大型の木製ボウル(feast bowl)が作られ、
木の形状や質感を活かした造形が見られます。
こうした姿勢は、後の木工文化にも通じています。

20世紀に入ると、スタジオクラフトの流れの中で、
木の節や杢、瘤といった不均一な要素が積極的に評価されるようになります。

クラロウォールナットやブラックウォールナットなど、
豊かな木目を持つ材は、高級家具やアートピースに用いられ、
「自然のままの表情」を引き出す造形が発展しました。

現代では、こうした木材は家具だけでなく、
建築内装や自動車の木質加飾などにも応用されています。

アメリカにおける瘤材とは、
自然の個体差そのものを価値へと転換する素材です。

瘤材の利用は、先住民の伝統工芸から始まります。北米先住民の間では、
レッドウッドのバール材を用いて食物供物用のFeast Bowl(供物鉢)が作られており、
そこに彫刻や文様を施すことで自然の力を宿す器として尊ばれていました。
近代以降になると、カリフォルニアを中心にクラロウォールナットやブラックウォールナットといった瘤材が広く知られるようになり、
アメリカン・クラフトムーブメントの中で高級家具やアートピースに用いられました。
さらにこの流れは自動車産業にも広がり、
特にトヨタ・レクサスでは現在でも北米産ウォールナットの柾目材がインテリアに使用されています。
アメリカにおける瘤材は、開拓精神と職人文化が融合した象徴的素材として、
伝統と現代性の架け橋となって機能しています。

このように瘤材は世界各地で「自然が生み出した唯一無二の装飾性を持つ素材」として高く評価されてきました。


ヨーロッパ

ヨーロッパにおける瘤材(burr / burl)は、
無垢材としてそのまま使うというよりも、
薄く挽いた突板として家具の表面に展開されることで評価されてきました。

実際に、メトロポリタン美術館に所蔵されている
18世紀初頭の英国家具(ca.1720)には、
「walnut and burr walnut veneer」と記されており、
胡桃の瘤杢を薄く加工し、装飾面として用いる技法が確認できます。

ここで重要なのは、単なる材料利用ではないという点です。
瘤杢の複雑な木目は、「一枚の模様」として扱われ、
家具全体の見た目を構成する要素として設計されています。

つまりヨーロッパでは、瘤材は素材そのものというより、
見た目を完成させるためのデザインの一部として扱われてきました

この考え方は、17世紀以降の家具文化の中で発展しました。
ウォルナットやマホガニーの瘤材は、寄木細工や化粧板として用いられ、
その複雑な杢は地位や富や象徴とされたようです。

特にロココ様式やヴィクトリア様式の家具では、
左右対称の構成の中に瘤杢が配置され、
人工的な秩序と自然の複雑性が同時に表現されました。

この伝統は現代にも引き継がれています。

たとえばRolls-Royceでは、ウォルナットの突板を左右対称に並べる「ブックマッチ」によって、
自然の模様を整った構造として見せる手法が用いられています。

またBentleyでも、根瘤由来の材を薄く加工し、
特に杢の美しい部分を選び出して左右対称に配置する工程が公開されています。

こうした手法は、単に美しい木を使うのではなく、
自然の偶然を人の手で整え、完成された形にするという思想に基づいています。

ヨーロッパにおける瘤材とは、
自然のままの素材というよりも
構築された美の中に組み込まれる、自然の異質な模様です。

偶然生まれた複雑な木目は、
人の設計によって秩序の中に配置されることで、
はじめて“完成された美”として現れます。

・花梨 , アンボイナバール|瘤材

花梨瘤(アンボイナバール)Amboyna burl

商業的乱伐により枯渇する瘤材

1970年代以降、アメリカを主導に、自然を残すべきだというムーブメントが興り
許されてきた商業的な伐採が、乱伐として、見過ごされなくなっていきました。
1973年にアメリカで採択されたワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物種の国際取引に関する条約)を通して、
罰則が明文化され、それ以降現在に至るまで、この流れは変わっていません。
SDGs(持続可能な開発目標)はこの流れを汲んでいます。
ワシントン条約以前に輸入された材の売買は禁止されていません。
現在少量出回っている大型瘤材は過去の1970年以前の輸入材だと考えられます。

現代の瘤材の価値ある利用方法とは?

新たな伐採が禁止されている一方で、
残されたすでにある瘤材をどのように使うのかについては私たちが考えるべき課題です。
現在、瘤材は工芸品や家具、楽器などに用いられています。
歴史的にも瘤材は差し色として使われてきました。
均質で再現可能な製品があふれ続けている現代においては
瘤のこの差し色が一層際立っています。

ぐい呑みやボウル、トレイ、ペントレイ、万年筆やボールペンなどの木軸文具、
指輪やペンダントといったアクセサリー、ジュエリーボックスなどの小箱類。
また家具では、テーブル天板やキャビネットの前板、引き出し面。
個性が強いため「どこに」「どのように」「どれだけ」使うかがポイントです。

まとめ|世界各地で評価の高い産物

瘤材とは、木のこぶから採れる自然由来の希少な装飾材です。
不可思議な生成過程、奇異な瘤の見た目に反する中身の模様の美しさ。
これらの全体が、瘤材が地域と時代をこえてきた所以
だと思います。

瘤材は、先に見たように日本だけではなく、さまざまな国で高く評価されてきた木材です。
その利用は、実用と鑑賞の両面にわたります。
現在は流通量が限られており、製品化される数も多くありません。
供給の限られた独自性のある素材を、どのように活用にしていくべきか。
すでにある残された材料を有効に活用することは意味のあることだと思います。

まなこの音では、記事に掲載したような瘤(こぶ)を素材に
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瘤製品一覧▼
https://shop.manakonooto.com/collections/burl
この機をご縁に、ぜひご参照ください。


 《 関連記事 》

瘤材は、木の中でも特異な表情をもつ素材ですが、
そもそもこのような木材が見出されてきた背景には「銘木」という概念があります。
銘木とは何か。その意味と捉え方について、こちらで詳しく解説しています▼
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・「花梨瘤(かりんこぶ)」に関する記事はこちら▼
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https://manakonooto.com/products/

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