世界各地には神話的な由来や縁起の良さが伝承される特別な木が存在します。
これらの樹木は現実に存在するものから伝説上のものまでさまざまで、
その名称自体が記憶に残りやすく、豊かなストーリーや象徴性を持っています。
以下に、インパクトを持つ世界の樹木を紹介します。
バオバブ(Baobab, 生命の木)
バオバブはアフリカやマダガスカルに生育する巨木で、「生命の木」「神秘の木」「逆さまの木」など数多くの異名を持ちます。
幹が徳利のように太く膨らみ、約10トンもの水を蓄えることができ、雨が降らなくても数か月枯れないほどの生命力があります。
樹齢が2,000年を超えるものもあり長寿の象徴とされ、マダガスカルやセネガルでは国のシンボルにも指定されています。
根が空に向かって生えているようにも見える独特のシルエットから
「天地が逆さまになった木」という伝説も生まれました(神が罰として木を逆さに植えた、悪魔が木を引き抜いて逆さに挿した等)。
アフリカでは古くから聖霊が宿る神聖な木と信じられ、
果実や種は栄養豊富で人々の生活を支えることから
バオバブはまさに「生命を司る木」として広く知られています。
ユグドラシル(Yggdrasil)
北欧神話に登場するユグドラシルは、宇宙の万物を支える巨大なトネリコの世界樹です。
枝葉は九つの世界まですそ野を広げ、一本の木が天上界・地上界・地下界を貫いて宇宙の秩序を体現しているとされます。
別名「万物の宿り」「永遠の樹」とも呼ばれ、その瑞々しい緑は世界を包み込む生命力の象徴です。
大神オーディンが深い知恵を得るために自身を捧げ、ルーン文字の秘儀を授かったという逸話もあり、
大いなる自己犠牲が叡智と再生をもたらす象徴として尊ばれています。
現代でもゲームや文学にしばしば登場し、その神秘的な響きと壮大なイメージは多くの人々を魅了し続けています。
菩提樹(ぼだいじゅ, Bodhi Tree)
菩提樹は釈迦(ゴータマ・シッダールタ)がその下で悟り(菩提)を開いたことで知られる聖なる木です。
「菩提(ぼだい)」とはサンスクリット語の Bodhi(目覚め、悟り)の音写で、「菩提樹」とは直訳で「悟りの木」を意味します。
インド北部ブッダガヤにある初代菩提樹(インドボダイジュ、別名ピッパラやアシュヴァッタ)は、
仏教三大聖樹の一つとして崇められ、悟りそのものや釈迦を象徴する存在となりました。
釈迦入滅後も菩提樹の苗木は各地に伝えられ、仏教圏では多くの寺院にこの木が植えられています。
(日本の寺院で「菩提樹」と呼ばれるものは同名の別種ですが、悟りの象徴としてその名が受け継がれています)
「菩提樹の下で座禅を組む」というイメージは悟り・智慧の象徴として広く認知されており、
その名前もまた仏教精神を体現する吉兆な響きを持っています。
カルパヴリクシャ(Kalpavriksha, 如意樹)
ヒンドゥー神話において、カルパヴリクシャ(カルパタル、カルパドゥルマとも)は
「あらゆる願いを叶える木」として語られる伝説の聖樹です。
天界の神インドラの楽園(ナンダナの森)に生えているとされ、
高さ10ヨージャナ(約144km)にも達する巨木で、黄金色の香り高い果実を実らせます。
この木に祈願すればどんな望みでも叶うと信じられており、
ヒンドゥー教の創造神話「乳海攪拌」の際に14の宝物の一つとして出現したとも伝えられます。
インドラ神がその宝樹を天界に持ち帰った後、神々はこの樹のおかげで不安や欠乏を知らずに過ごせたとされ、
『ラグヴァンシャ』(古代インドの叙事詩)ではこの樹を「惜しみなく人に富を施す豊穣と幸福の象徴」と讃えています。
カルパヴリクシャは豊穣・繁栄・長寿の吉兆を体現する木として語り継がれ、
現在でもインドでは「願いが叶う木」の意味で日常的にその名が使われることもあります。
蟠桃(ばんとう, 仙桃 / Peaches of Immortality)
蟠桃は中国神話で語られる「不老不死の桃」で、西王母(せいおうぼ)という仙女が治める仙境・崑崙山の園に生えるとされます。
この桃の木は3,000年に一度だけ実を結ぶとされ、その果実は「王母桃」「仙桃」などとも呼ばれます。
極めて稀にしか手に入らないこの桃を一口でも食べれば不老長寿を得られると信じられてきました。
古典『西遊記』でも孫悟空が天界の蟠桃園に忍び込み、手筈を無視してこの仙桃を盗み食いして不死身になる場面が有名です。
桃は古来中国において邪気を祓い長寿をもたらす仙果とされ、
桃の木で作った杖を仙人が持つなど吉兆のモチーフとして重んじられてきました。
現代でも誕生日に桃の形をかたどった寿桃の菓子を食べる風習があるなど、
桃は長寿と繁栄の象徴として東アジア一帯で親しまれています。
ドラゴンブラッドツリー(竜血樹)
中東イエメンのソコトラ島に自生するドラゴンブラッドツリー(竜血樹)は、
その名のとおり「龍の血」を思わせる赤い樹液を出すことで知られる不思議な木です。
傘を逆さに立てたような独特の樹冠が空に広がる姿は、一度見たら忘れられないインパクトがあります。
幹を傷つけると濃厚な赤色の樹液が滴り落ちる様子から中世以来薬や染料として重宝され、
古代ローマではこの竜血樹の樹脂がバイオリンのニスの染料にも用いられたと伝わります。
ソコトラ島の言い伝えでは、倒されたドラゴン(竜)がその後この木に姿を変えたともいわれ、
真紅の樹液は竜の生命の名残だと信じられています。
現地ではその神秘的な姿から島の象徴とされ、
世界中の植物愛好家からも「地球外の植物」のようだと注目を集めるユニークな存在です。
セイバ(Ceiba, 世界樹)
中米マヤ文明では、セイバ(和名:パンヤノキ)という熱帯の巨木が聖なる「世界樹」とみなされてきました。
マヤ神話の宇宙観によれば、セイバの木は天空と地上、
そして地下世界シバルバーを繋ぐ世界軸を象徴し、その根は地下深くに達し、枝は天界に届くとされます。
古代マヤの碑文やレリーフには、十字の形に様式化されたセイバが生命の木として刻まれており、王権や宇宙の中心を示す重要なモチーフでした。
現代でもユカタン半島の村々ではこの巨木が村の中心や祭礼の場に植えられ、
成長と生命力を授ける象徴として人々の暮らしと精神文化に寄り添っています。
高さ60mにも及ぶセイバの堂々たる姿は生命力と成長の象徴であり、
大地と天空を結ぶ存在として多くの中南米の文化で崇拝の対象となっています。
扶桑(ふそう, Fusang)
扶桑は中国の伝説に登場する東方の果てに立つという巨大な神木で、
毎朝この木から太陽が昇ると信じられていました。
『山海経』などによれば、海の東にある扶桑国に双幹の大桑樹「扶桑樹」がそびえ、
』その枝には太陽の化身たる三本足の烏(太陽烏、金烏)が棲んでいたとされます。
夜明けになると太陽烏が扶桑の枝から飛び立ち、天を巡った後、夕方にはまたこの木に戻って休むと描写されています。
古代の人々は「蓬莱山に棲む仙人のように長生きし、扶桑樹に昇る太陽のように若返りたい」と願いを込めたと伝えられ、
扶桑は不老長寿と再生のシンボルとして憧憬の対象でした。
後世、扶桑と扶桑国は日本の異名ともなり(東の海上の理想郷になぞらえられたため)、
日本でも明治期に発行された歴史書『扶桑略記』などにその名が使われています。
現在「扶桑」はしばしば古代東方世界の雅称として詩歌に登場し、
その漢字の美しい字面とともに永遠の若さや日の出の瑞兆をイメージさせる象徴的な樹木です。
おわりに
今回、「木」という共通項で世界の神秘的な樹木を調べる中で、初めて名前を知った木も多く、その多彩な物語に心を惹かれました。
特に竜血樹の樹液が赤いというのは驚かされ、実際にこの目で見てみたいという気持ちになりました。
先日、大阪万博(いのち輝く未来社会のデザイン)に足を運びましたが
樹齢6500年の「神代オーク」(氷河期に土中に保存された樹木)が広いスペースに100本以上ずらっと並ぶ展示は
荒野に立つ黒いサボテンのような違和感と荘厳さがありました。

同じ“木”とひと口に言っても、姿形も背景にある歴史もまったく異なります。
世界にはまだ、ここでは紹介していない“木”が存在するはずです。
もし皆さまの知る樹木や物語があれば、ぜひ共有ください。
氷河期時代に埋もれた大阪万博に展示される神代木を使用した製品を見る▼
https://shop.manakonooto.com/collections/jindai
※神代オークはございません。
こちらは、かつて樹木として生きていた希少な木材群である銘木を、素材として製作した商品一覧です。
樹木としての個性は材面や香りなどに似た形で現れます。
▶︎ 製品一覧|まなこの音
『銘木製|小物・実用品の制作・販売 』 _ “連なる時間、繋がる大地” _▼
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まなこの音では、上記のような世界的に名の知られた遺産級の巨樹とまではいきませんが
日本の有数の巨木を材料に、杢(もく)と呼ばれる個性ある模様が滲む木材を素材に
「できるだけ手を加えない」ことを念頭に、自然界の形を残した実用品を
書き手の私自身が、旋盤や刃物を使い制作・販売しています。
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《 まなこの音について 》
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個々の特徴ある木がより引き立つ方法を模索しています。
また、銘木材を使用した日常に使える「製品」の制作、販売を行なっております。
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▶︎ gallary|これまで撮影した作品群
約10年の期間に自身で撮影してきた作品からピックアップした写真群です▼
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▶ ONLINE SHOP|作品一覧
思想性に共鳴してくださった作家作品や自身が制作した製品の一覧です▼
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《 関連記事 》
・「屋久杉」に関する記事はこちら▼
https://manakonooto.com/door-to-forest/yakusugi-form/
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